アーティストのインクルーシブな表現について、障害当事者とともに考える「感想シェア会」に参加しました。
開催されたのは2021年2月19日(金)、zoomにて。
内容は音声ガイドと字幕のついたバリアフリー版のコンテンポラリーダンス映像『n o w h e r e』を鑑賞したあとで、つくり手である湯浅永麻さんと障害をもった人たちで、作品について語り合うというもの。
私は動く光が見られないので、実質ほとんど全盲者としての参加です。
なので、作品動画は音声のみでの鑑賞。
そもそもダンスというジャンル自体、視覚障害者が楽しめるのだろうか? という疑問が大きく伴っての参加。
それで、いざ作品を聴いてみると、音声ガイドらしきものはなく、別途テキストでの解説が配布されておりました。
そのテキスト解説により、ビジュアル情報が理解できたところもありましたが、作品をリアルタイムで聴きながら理解するということができずに、ちょっとそこは???と言う感じ。
それについては他の視覚障害者からも意見が出ました。
「事前にその解説を読んでいても本編を聴いてるときに全て覚えているわけではない」
うん。同感。
また、音声解説らしきものはないと書きましたが、実際はそれも入っていて、作者の湯浅永麻さんの意図で、あまりあからさまな挿入をあえてしなかったとのこと。
ああ、そういう試みしたくなるの分かります。芸術の世界ではあまり説明しすぎないのがよしという風潮がありますし。
ただ、視覚障害者向けの解説としてはうまくいかなかった模様。
視覚障害当事者は、多少雰囲気が壊れても構わず、理解できることを求めており、普段からそういった解説に慣れているので。
でも、そういうことを試みること自体に意義があるのだと思います。
それよりも、私は湯浅さんが時の流れに思いを馳せたり、物質の循環に着目するところに惹かれました。
私もそういうことを考えるのが大好きので。
なので、感想シェア会でそのことについて質問してみました。
「湯浅さん、物理学とか数学お好きですか?」
すると「理系は苦手だけど量子論は好き」というコメント。
くう! 私も量子論だーい好き! 萌え萌えです!
時間とか物質の変化とか探っていくととても面白い。原子も素粒子というもっと小さな粒からできていて、でもその粒は波の性質もあり、どうやら私たちが当然と思っている常識〜1つの時間軸に物質が存在する場所は一箇所のみ〜というのは間違っているようです。
アクセシビリティーとかインクルーシブよりもそっちで嬉しくなっていたくるっくでした。
そして、そんな話ができて感想シェア会そのものも面白かったです。
作者の湯浅さんだけでなく、ほかの方々の感想を聴くことも含めて。
そう思うと芸術作品ってコミュニケーションのきっかけを与えてくれるものというところもありますね。
そこから思わぬ方向に向いて相手の内面を探れたり。
そう考えると、ただ作品を1人で鑑賞するだけで終わらせるのはとてももったいないことなのかもしれないと思うのでした。
執筆者:立川くるみ
動く光・強い光を見ると身体苦痛が生じる眼球使用困難症(PDES)。画面読み上げ機能を使うが少しお絵描き可。
みんなで勝ち取る眼球困難フロンティアの会(G-fronteir)、苦Looksワークス代表。
制度の谷間PDESの権利獲得に励む一方で治癒と経済的自立を目指す。